閑散とした毎日に花束を

日々の出来事を徒然草

我が懸想の痛みを忍びて泣きぬ

 

 

 

師走の夜、あなたもどこかでこの曇天の空を見上げているでしょうか。

 

 

こちらの夜は、そちらよりも其れは其れは寒さが凛々と身に染み入ります。

 

 

 

 

 


今日はわたしからあなたへ最初で最後の恋の文。

 


あなたがこの文を知る由なんてきっとないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてあなたの音楽に出会ってから、もう7年の月日が流れようとしています。

 

 


月並みな言葉になってしまうけれど、この7年間数え切れないほどのたくさんの夢を見せてくれたあなたには感謝しかありません。

 

 

 


本当にありがとう。

 

 


唯々ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたはわたしが一番尊敬する音楽家であり、また、かつて同じ志を持ったわたしがなることができなかったプロの音楽家でした。

 

 

 

 

 

あなたが教えてくれた文學、あなたがわたしのこころを揺らしたリリックやメロディー、あなたが見せてくれた景色はどれも色鮮やかで、そのすべてはこれからも一生涯にわたりわたしの中で色を変えて生き続けます。

 

 

 

 


あなたのことをひとつ知るたびにどんどん知りたくなって、ほんの少しの些細なことで勘ぐり、時には身動きが取れなくなるほどの嫉妬が渦巻くこともありました。

 

 

 

あなたの何気ない一挙一動が、わたしにとっては並外れた嵐ようにこころを揺さぶります。

 

 

 

 

 

 

 


あなたの言葉の選び方、独創的なメロディー、唯一無二の声、6本の弦から奏でる技巧を凝らしたリフ、豊かな表現の仕方、どれをとっても私には適わないという、かつて同じ志を持った者としての嫉妬や羨望などがふとしたときに顔を出し、そんな陰鬱とした感情がいつもこころの淵を超えて溢れていました。

 

 

 


だってあなたはわたしがなりたかったプロのバンドマンなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

でもわたしにはあなたにこの感情を伝える術はありません。

 

 

20代前半で夢に見切りをつけ自らステージを降りた、今はもうなにも持たない丸腰のわたしに為す術なんかなにひとつないのです。

 

 

 

 

 

 


これからもどんどん遠くなってゆくあなたの背中を追い、大勢のオーディエンスの中に紛れ、右手を挙げ身体を揺らし、わたしの鼓動が鳴り止むその瞬間までずっと、あなたの行く場所の景色を見るためにどこへだってついて行きたかった。

 

 

 

 

 

 

 


でもごめんなさい。

 

わたしは一緒にもうこの先へは行けません。

 

 

 

 

 

 

この距離はもう恋だと知って幾年が過ぎ、ここにはもう、あなたの音楽が好きなわたしよりも、音楽家としての嫉妬心や羨望が渦巻き、あなたに慕情を抱くわたししかいません。

 

 

 

今わたしの頬をつたうものがすべてです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今後の音楽家としてのあなたの益々のご活躍への祈りをもって、わたしの7年間に及んだ敬慕に幕を閉じたいと思います。

 

 

 

 

 

 

7年間本当にありがとう。

 

 

とてもお慕い申しておりました。

 

 

 

 

わたしの長い長い夢はこれにて終焉を告げます。

 

 

 

 

 


2021年12月15日